海外製造の模倣品を国内に流入させない水際対策として有効なのが「輸入差止申立」です。本記事では、対象権利や申請手順、認定手続の流れ、費用や刑事罰まで、税関・特許庁の公式情報を基にわかりやすく解説します。
輸入差止申立とは、税関長に対して模倣品などの輸入を差し止め、認定手続の開始を求める制度です。関税法第69条の13第1項に基づき、特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権・著作隣接権・育成者権を有する者、または不正競争差止請求権者が申立てを行うことができます。
税関はすべての知的財産を把握しているわけではないため、権利者からの情報提供が水際取締りの実効性を大きく左右します。自社ブランドの模倣品を国内市場に流通させないために、企業の知財・法務担当者がまず検討すべき水際対策といえるでしょう。
参照元:e-Gov 法令検索|関税法(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000061/#Mp-Ch_6-Se_4-Ss_1-At_69_2)
参照元:特許庁(https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/chidan/zeikan.html)
輸入差止申立の対象となる主な権利は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権(地域団体商標を含む)、著作権・著作隣接権、回路配置利用権、育成者権、および不正競争防止法2条1項1号~3号・10号・17号・18号に該当する行為(周知表示混同惹起・著名表示冒用・形態模倣品・営業秘密侵害品・技術的制限手段無効化装置等)です。
実務上、ロゴやマークを無断使用した偽造品を水際で差し止める場合は、商標権侵害と不正競争防止法2条1項1号~3号違反を併せて申立てるのが一般的です。自社のどの権利を根拠にすれば侵害を主張できるかを整理したうえで、申立ての可否を判断することが重要となります。
参照元:税関カスタムスアンサー2003(https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/kinseihin/2003_jr.htm)
参照元:BUSINESS LAWYERS「偽造品の輸入を税関で差し止めるにはどうすればよいか」(https://www.businesslawyers.jp/practices/248)
輸入差止申立ては、単に書類を提出すれば済むものではなく、事前相談を経て要件を確認し、必要書類をそろえたうえで税関の知的財産調査官に提出する流れとなります。ここでは、円滑な受理と実効性ある取締りにつなげるための一連のステップを整理して解説します。
申立てを円滑に行うため、税関では事前相談を受け付けています。相談時には、a.登録原簿謄本・公報等(権利関係の確認)、b.侵害品と真正品の写真等(侵害の事実確認)、c.真正品カタログ等(識別方法の確認)、d.判決・和解関係書類(実績の裏付け)などを示します。
事前相談は電話予約制で、代理人のみで相談する場合は委任状が必要となります。事前段階で疑問点を解消しておくことで、本申立ての受理がスムーズに進みます。
提出先は全国9税関(函館・東京・横浜・名古屋・大阪・神戸・門司・長崎・沖縄地区)の本関に配置される「知的財産調査官」で、いずれか1か所に提出すれば全国の税関で取締りが行われます。提出書式は、特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権・著作隣接権・育成者権に基づく場合は税関様式C第5840号「輸入差止申立書」、不正競争防止法に基づく場合は税関様式C第5842号「輸入差止申立書(保護対象商品等表示等関係)」等を用います。
必要資料は、(1)申立書、(2)登録原簿謄本・公報、(3)侵害の事実を疎明する資料、(4)識別ポイントに係る資料、(5)通関解放金の額の算定資料(特許権・実用新案権・意匠権・保護対象営業秘密関係のみ)、(6)代理人による場合は委任状となります。
参照元:財務省税関「各種様式」(https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/j_001.htm)
参照元:財務省税関「差止申立ての一般的手順」(https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_003.htm)
受理・不受理の決定までは、提出から通常約1か月が目途とされています。有効期間は税関の受理日から最長4年間で、申立人が希望する期間を設定可能です。対象権利の存続期間が4年以内に満了する場合は、その存続期間の最終日までが有効期間となります。
また、有効期間の最終日の3か月前から更新手続が可能で、対象権利が存続する限り繰り返し更新できます。模倣品対策を継続的に運用するためには、更新スケジュールを社内で管理しておくことが重要です。
参照元:特許庁「税関の制度紹介」(https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/chidan/zeikan.html)
参照元:BUSINESS LAWYERS(https://www.businesslawyers.jp/practices/248)
輸入差止申立てが受理された後、実際に模倣品の疑いがある貨物が発見されると、税関で「認定手続」が開始されます。ここでは、権利者・輸入者双方への通知から、証拠・意見のやり取り、最終的な没収・廃棄に至るまでのプロセスを整理します。
税関検査で侵害疑義物品を発見すると、税関は「認定手続」を開始し、権利者と輸入者の双方に「認定手続開始通知書」を送付します。権利者には輸入者・仕出人の氏名・住所等が、輸入者には権利者の氏名・住所等が通知されます。
双方は通知に定められた期日までに証拠・意見を提出でき、権利者は税関を訪問して現物点検(見本検査)を行うか、税関から送付される画像により真贋確認を行うことができます。
参照元:財務省税関「認定手続の流れ」(https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/c_001.htm)
税関は提出された意見・証拠を審理し、侵害物品と認定した場合は認定通知書を送付します。輸入者から不服申立て等がなければ、税関は貨物を没収・廃棄します。輸入者が争わない場合は簡素化手続(意見・証拠提出不要で認定)が用いられ、迅速に処分が進みます。
逆に「非該当」と認定された場合は輸入許可となるため、権利者側は識別ポイントの明確化や真贋鑑定資料の準備を含め、疎明の質を高めることが結果を左右します。
税関への申立て自体に手数料はかかりません。ただし、申立書の作成や識別ポイント資料の準備を弁護士・弁理士に依頼する場合はその費用が発生します。また、特許権・実用新案権・意匠権・保護対象営業秘密関係の申立てでは、輸入者が通関解放金を供託して貨物の通関を求めることができるため、算定資料の準備も必要です。
さらに、知的財産侵害物品を故意に輸入した者には10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金(関税法109条2項)が科され得るなど、刑事罰の抑止力にも触れておくべきでしょう。自社対応の範囲と外部専門家に委ねる範囲を明確にし、実効的な水際対策を構築することが重要です。
参照元:特許庁「税関の制度紹介」(https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/chidan/zeikan.html)
参照元:BUSINESS LAWYERS(https://www.businesslawyers.jp/practices/248)
輸入差止申立は、模倣品の国内流入を水際で防ぐ有効な制度です。対象権利や必要書類、認定手続の流れを理解し、事前相談や識別ポイント資料の準備を丁寧に行うことで実効性が高まります。自社リソースと専門家の活用を組み合わせ、継続的な模倣品対策として運用することが重要です。
「ECモールに見覚えのない出品者が現れた」「削除しても追いつかず、法的対応が必要になってきた」「自社を騙る偽サイトや偽アカウントが出てきた」…。インターネット上の模倣品被害は、大きく3つのパターンに集約されます。パターンによって取るべき対策が異なるため、目的別におすすめの会社を3社紹介します。
※1 参照元:サカタブランドソリューションズ公式HPより、2026年5月調査時点
※2 削除申告は海外のみ対応しています。日本では法律で規制されているため、自社の顧問弁護士を介してご対応ください。
※3 参照元:IP FORWARD公式HP(https://www.ip-fw.com/1870898)